三河秩父観音 秋葉山常夜燈 豊田市

御所山誓願寺(愛知県豊田市上郷町) 戸田家上野城主時代菩提寺

2020年5月6日

令和四年新企画のお知らせ

新企画「愛知県下新十名所」

 新愛知新聞社が昭和二年(1927年)に「愛知県の新十名所を読者投票で決定する。」というイベントを実施します。愛知県下を狂気の投票合戦へと誘ったこのイベントへの投票総数は驚異の1400万票以上。また、100票以上の投票を集めた名所候補は67カ所にも上ります。2022年、当サイトではこの67ヵ所の名所を巡り紹介していこうと思います。

寺院情報

寺院名御所山誓願寺
所在地愛知県豊田市上郷町御所名残一五〇番
御本尊阿弥陀如来
宗 派浄土宗鎮西派
創 建元徳二年(1330年)
札 所三河秩父観音 十七番札所
御朱印
H P

参拝日:2018年12月19日

沿革・由緒

 碧海郡誌によると、「元々は上郷の地にあった「栄昌禅寺」の属院にして清流寺と号し曹洞宗の寺院だったとあります。天文十四年(1545年)に浄土宗に改宗し寺号を誓願寺と改め、山号を御所山とした。是れ国長親王の御遺跡なりと称する御所名残の名によりて名付けしものなり。」とあります。
 以前紹介している「稲荷山隣松寺/紹介記事」はここに出てくる「国長親王」の菩提を弔うために第五十四代仁明天皇の勅命により建立された寺院になります。そして、現在の誓願寺周辺の地名を「御所名残」といかにも往古にお偉い方が住んでいた御所があった事を示すような地名になっています。どうやら、上野上村城から誓願寺周辺のかなり広い敷地を持つ御所が作られていたようです。国長親王が没した後には、この御所址に「栄昌寺」が建立されます。この時は天台宗の寺院だったようで、同じ天台宗だった「隣松寺」と同時に建立された可能性もありますね。
 どうやら今回参拝する「御所山誓願寺」の本山と言うべき「栄昌寺」は碧海郡誌を読むとどちらかに移転した様な感じを受けます。「上郷風土記」によると、隣松寺の造営工事に際して、永昌寺は隣松寺境内に移転(ということは合併?)したと書かれています。

 そして、文安年中(1444-49年)に近江国より「戸田宗光」がこの地を訪れ、当時は清流寺と号していた誓願寺に刈宿していたとも。そして、栄昌寺跡地、その前は御所跡地に「上野上村城/紹介記事」を築城したのでしょう。そして、刈宿としていた「清流寺」に自らの持念仏である聖観世音象を寄進し、戸田家の菩提寺とするとともに天台宗から曹洞宗に改宗したのだと思います。

歴史探訪

 戸田宗光が築城した「上野上村城」を散策し、その北西にある戸田家菩提寺となる「御所山誓願寺」を参拝していきます。戸田氏の菩提寺という事は事前に調べて知っていたのですが、ここに御所とも呼ばれる皇族関係者の屋敷があったとは思ってもいませんでした。上野上村城だけを調べていたら、戸田宗光が刈宿として清流寺に滞在した事も、御所跡と言われる場所に上野上村城を築城したという事がわかりませんでした。こんな発見は大歓迎です。

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参拝記

 上野上村城の目の前を東西に走る県道239号線を西に少し進み、方向者用信号のある交差点を右折(北側)して路地を進んでいきます。古い地図を見ていると、細いながら上郷村の南北に抜けている昔の街道の様です。旧街道は誓願寺の山門に向かって真っすぐ伸びていて、誓願寺の境内に沿うように蛇行して北に抜けています。

境内入口

 袖壁の設けられた薬医門の山門になります。山門を抜けると本堂の建つ場所が一段高くなっていて石段の参道が続きます。

 「浄土宗誓願寺」と彫られた寺号標が門前に据えられています。

本堂

 入母屋造瓦葺平入の向拝が設けられた重層造りの本堂になります。平成なって以降、本堂の造営工事において鉄筋コンクリート造を採用された寺院でよく見かける重層造りの本堂の様式です。1階部分をホールだったり寺務所だったり、納骨堂だったりと多目的に使えるので採用されるケースが多いのでしょう。
 限られた境内を有効的に使えるのでこれからも増えていく建築様式ではないかなと思います。ここ誓願寺の境内はまだまだ余裕があるので、広い境内にポツンと本堂が建っている感じなんですが、徐々に伽藍整備が行われていくのでしょうね。

 同じ浄土宗鎮西派に属する東京の増上寺大僧正による扁額になります。徳川将軍家の霊廟の多くが増上寺に設けられていましたが、明治維新と第二次世界大戦でかなり消失してしまっていますが、それでもなお、松平家・徳川家所縁の寺院として是非とも参拝したい寺院です。

戸田家菩提所

 なかなか放置具合が凄まじい「戸田家菩提所」になります。ここ誓願寺に弔われている戸田家の方は正親町三条(戸田)実興、戸田氏一、戸田宗光、戸田憲光の四名になります。宗光、憲光の親子については、田原に移ってからの戸田氏菩提寺「雲龍山長興寺」に墓石がありますが、帰依していた誓願寺にも遺骨が分骨されたのでしょうね。

 田原の長興寺に菩提寺が移ってしまっているので致し方ない部分もあると思いますが、ほぼ同じ地域の隣松寺の墓石の管理がしっかりとされていたので、その格差が非常に目立ってしまいますね。

秋葉山常夜燈

 旧街道沿いに鎮座する秋葉山常夜燈です。移転してここに据えられたのかは不明ですが、街道沿いという言葉がぴったりなこの場所にあるということは、江戸時代からここにあったんだろうなあと思わせてくれます。

 安政六年(1859年)という幕末の動乱期に建てられた常夜燈になります。常夜燈を据えてる秋葉信仰は幕末から明治期にかけて爆発的に広がった感じを受けます。愛知県は静岡県の秋葉山からも近い場所に位置する為、非常に秋葉信仰が盛んだった地域です。今でも町内会で秋葉神社への代参が行われていますね。

地図で所在地を確認

寺院名御所山誓願寺
所在地愛知県豊田市上郷町御所名残一五〇番
最寄駅愛知環状鉄道「三河上郷駅」徒歩6分

-三河秩父観音, 秋葉山常夜燈, 豊田市
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