懸魚
懸魚(げぎょ)とは、破風板の下に装飾を目的として付けられる彫刻を施した板を事を指します。
中国から伝わった垂魚が元と言われ、火に弱い木造の建物を火災から守るためのもので、火除けのまじないとして取り付けてあります。
神社仏閣においては、切妻屋根や入母屋屋根の社殿で会った場合、必ずと言ってもいいほど取り付けられています。ただ、屋根を見上げないと見えないし、社殿の構造上、社殿を横から見上げないと見る機会がない為、ほとんど見過ごされている(気付かれない)存在でもあります。
また、懸魚には六葉とよばれる物が取り付けられています。その名の通り6枚の葉の形から六葉と呼ばれており、9割近くは六角形の形をしています。たまに違う形をしたものも存在していますが、形などにとらわれず六葉と呼びます。
そんなともすれば見過ごされてしまう存在の懸魚にフォーカスを当てて紹介していきます。
懸魚の種類
- 蕪懸魚(かぶらげぎょ)
野菜の蕪(かぶ)の形状と似ているところから付いた呼称
・同体が細くくびれて、渦巻きのある形状が特徴
・縞模様の渦巻きは鱗目(うろこめ)と呼ばれています
- 猪目懸魚(いのめげぎょ)
猪目懸魚は見方によって猪の頭に見え、猪の目を想像するところからついた呼称
・ハート形の穴をくり抜いている形状が特徴
・中心のひょうたんの透かし彫りは、ハート形を二段に重ねてできた文様
- 三花懸魚(みつばなげぎょ)
三花懸魚は、猪目懸魚や蕪懸魚の変形
・既存の猪目や蕪らの図柄を三個組み合わせてひとつの形にした意匠です。 - 二重懸魚(にじゅうげぎょ)
二重懸魚は、蕪あるいは猪目懸魚の原形を二段に重ねた形 - 梅鉢懸魚(うめばちげぎょ)
梅鉢紋は奈良時代に中国から日本へ伝播した梅の花を図形化したもの - 彫懸魚(ほりげぎょ)
彫懸魚は、彫刻を主体とした形状
・彫刻の題材は、鳳凰などの瑞鳥・瑞花の意匠から鬼・兎・鶴・亀・鯉など - 貝頭懸魚(かいがしらげぎょ)
貝頭懸魚は、輪郭が貝の形に似ているところから付いた呼称
・貝頭は、江戸時代前期に出てきた意匠で、主に神社の建物に付いています。 - 雁股懸魚(かりまたげぎょ)
雁股は、狩猟の対象であった雁が斜めに並んで飛ぶ雁行の形から付いた呼称
・一説には、弓矢の先端が二股に分かれている鏃に似ているところから付いたと言われています。 - 楯懸魚(たてげぎょ)
武具の楯(たて)に似ているところから付いた呼称 - 切懸魚(きりげぎょ)
匠切懸魚は六角形の意 - 結綿懸魚(ゆいわたげぎょ)
繭の糸からできた真綿を、束ねて結わえた形に似ているところから付いた呼称
懸魚には、鰭と呼ばれる懸魚を中心に左右に延びる化粧板が取り付けられています。
鰭の意匠は水に縁のある浪ひれが多く他に雲ひれや草花をモチーフとしたものがあります。
鰭付きの懸魚が8割、鰭無しの懸魚が2割くらいと言われています。
六葉の種類
一説には懸魚が取り付けられ始めたのは鎌倉時代からと言われているのですが、懸魚の構造上風食で朽ち果てる事が多く、古い物が残りにくい為、現存しているのが鎌倉時代の物です。
ちなみに、神社の社殿作りで神明造りには懸魚は存在しません。
神社巡りの共にご朱印帳を持っていきませんか?
[amazonjs asin="B01M16LY3X" locale="JP" title="【御朱印帳】大判/四神青龍 standard Ver."]