(旧)三河新四国霊場の紹介

(旧)三河新四国霊場とは?

昭和二年、本四国霊場の会長でもあった「善通寺誕生院」の貫主が弘法大師像と直傳證を拝受し、写し四国霊場として開創されたのが(旧)三河新四国霊場になります。現在でも、当時拝受した直傳證が豊田市四郷町にある「水月山 雲龍寺」の本堂内に掲げられています。(雲龍寺は、(旧)三河新四国霊場七十六番札所、新四国霊場十九番,二十番札所になっています。)

札所の位置関係から、開創当時、蒲郡から足助町(最終的に西中金駅-足助駅は未開通)まで鉄道を敷設運行を行っていた「三河鐵道株式会社」が三河新四国霊場の開創に非常に関わっていました。その為、三河新四国と言いながら、三河鉄道沿線に札所が置かれることになります。

見事に三河鉄道の路線と(旧)三河新四国霊場の札所が一致しているのが見て取れるかと思います。
三河新四国と言いながら、大半の札所が西三河のしかも沿岸部分に集中していて、三河鉄道との関わりに気付くまで、なんでこんな札所の選び方をしたのか不思議でしかたありませんでした。

この三河鉄道と三河新四国の関係は、以前アップした別記事に詳しく述べさせて頂いているのでそちらを参照して頂くとありがたいです。

 そんな(旧)三河新四国霊場も、昭和十六年、三河鉄道が名古屋鉄道に吸収合併により消滅し、さらに太平洋戦争の影響もあり、戦後はほぼ忘れられてしまった霊場となっていたようです。そこで、昭和三十九年、札所を再編、再興させた三河新四国霊場が開創されます。この新たな三河新四国の札所には、今まで札所がなかった岡崎市、豊川市の寺院が新たに選ばれたり、西尾市の札所に関してはすべてが選外となり、新たに二カ寺が選定されるという、再編というより新規に霊場を作ったかのような入れ替わりぶりです。

(旧)三河新四国霊場を巡る

 昭和三十九年に札所を再編されたことで昭和二年開創時の霊場はその役目を終えたかのように皆様の記憶から消えていく事になります。しかし、札所案内石柱が札所であった寺院の門前などに今もなお残っています。

 昭和二年に直傳證を拝受したと前述しました。昭和二年は1927年なので、開創92周年(2019年現在)を迎えています。あと8年後には開創100周年なんですね。そこで、再編前の(旧)三河新四国霊場を現代に蘇らせるべく各札所を巡拝していこうと思います。

蒲郡線沿線の札所

 92年前の昭和二年にはまだ開通していなかった神谷駅(現在の松木島駅)ー蒲郡区間なんですが、既に敷設免許については下付されており、着工済みだったはずです。実際、翌年の昭和三年には吉良吉田駅まで延伸されていますが、この頃発生している昭和恐慌により激しい不況の波に飲み込まれたのか、吉良吉田駅-蒲郡駅(現在の蒲郡線)まで延伸が実現したのが昭和十一年になってからになります。

 元々は蒲郡ー西中金の間は同一路線となっていたのですが、名古屋鉄道に吸収合併後に「蒲郡駅ー吉良吉田駅」を蒲郡線として三河線とは分離されます。そして、吉良吉田駅に乗り入れていた西尾線と蒲郡線を線路結合されていきます。名古屋鉄道としては蒲郡線沿線を観光地化していく予定だったみたいですね。その為線路の規格、状態の差から蒲郡線への直通路線を三河線から西尾線に切り替えたとも言われています。

そんな?蒲郡線沿線にある札所を見ていこうと思います。

東三河を霊場とする東三新四国、穂の国観音などの札所と西三河を中心とする霊場になる三河新四国、三河海岸大師が遭遇しているのが蒲郡市にある札所の特徴でしょうか。特に、中央本町にある「松金山薬証寺」と西浦町にある「西浦山 無量寺」は、三河地方に開創された大師霊場の札所をかなり兼務している事から、この辺りの大師信仰の中心であることが見えてきます。 また、蒲郡市ー(旧)幡豆町にかけての札所が昭和三十九年の札所再編の際にも札所再選されているのが特徴かなと思います。

駅名 札所 寺院名 住所 宗派
札所霊場一覧
蒲郡 1 松金山薬証寺 蒲郡市中央本町7-2 真言宗醍醐派
三河新四国51,52番、参河國准四國53番、東三新四国59番
2 巌松山善応寺 蒲郡市元町13-18 浄土宗西山深草派
三河新四国49,50番東三新四国58番,三河観音14番,穂の国観音18番
形原 別格 海性山真如寺 蒲郡市形原町石橋11 浄土宗西山深草派
三河新四国53,54番三河海岸大師1番、三河観音17番、穂の国観音21番、善光寺願所9番
3 行基山實相院 蒲郡市形原町東上松27 浄土宗西山深草派
三河新四国55,56番三河海岸大師2番
4 法林山光忠寺 蒲郡市西浦町北馬場36 浄土宗鎮西派
『形原松平家菩提寺』
西浦 5 西浦山無量寺 蒲郡市西浦町日中30 真言宗醍醐派
三河新四国61,62番三河海岸大師4番、三河国准四国54番、東三新四国17番、東海不動尊19番、三河三不動、三河三封寺
6 神田山覚性院 蒲郡市西浦町北馬相11 浄土宗西山深草派
三河新四国59,60番三河海岸大師5番
これより西尾市に入ります。
東幡豆 7 性海山妙善寺 西尾市東幡豆町森66 浄土宗西山深草派
三河新四国65,66番三河海岸大師9番、三河観音20番、三河白寿観音4番
8 中尾山千手院 西尾市東幡豆町山崎24-1 真言宗醍醐派
三河新四国63,64番三河海岸大師番外、東条吉良観音5番
西幡豆 9 粟嶋山太山寺 西尾市寺部町林添63 真言宗醍醐派
三河新四国67,68番三河海岸大師13番、東条吉良観音6番
10 見影山徳林寺 西尾市西幡豆町北郷6 浄土宗西山深草派
三河海岸大師15番、三河観音21番、善光寺願所11番
三河
鳥羽
11 南向山観音寺 西尾市鳥羽町里58 浄土宗西山深草派
三河海岸大師18番、三河國准四国55番、三河西国観音14番
12 善證寺 西尾市鳥羽町里30 浄土宗西山深草派
三河海岸大師19番
※11番札所「観音寺」が無住の為、三河國准四国55番の御朱印はこちらで頂けます。
13 里郷山運光寺 西尾市吉良町宮崎宮前25 浄土宗西山深草派
三河海岸大師23番、三河観音22番、幡豆観音33番
吉良
吉田
14 医王山正法寺 西尾市吉良町乙川西大山7 曹洞宗
三河海岸大師24番、三河観音23番、『饗庭三社三箇寺』
15 如意山宝珠院 西尾市吉良町吉田字石池18 浄土宗西山深草派
三河海岸大師37番、東条吉良観音18番、三河観音24番、善光寺願所16番、三河七福神/寿老人
16 無量山専長寺 西尾市吉良町吉田斉藤久100 浄土宗西山深草派
三河海岸大師36番,善光寺願所14番
17 青龍山金蓮寺 西尾市吉良町饗庭七度ヶ入1 曹洞宗
三河海岸大師29番、東条吉良観音15番、三河観音27番、三河西国観音15番、東海不動尊20番、吉良西国24番、『三河七御堂』、『饗庭三社三箇寺』
18 北星山西福寺 西尾市吉良町吉田桐杭27 浄土宗西山深草派
三河海岸大師34番、三河國准四国56、東条吉良観音16番、,三河観音25番、善光寺願所15番

 蒲郡線終着駅の吉良吉田駅までやってきました。ここまで十八の札所と一つの別格霊場の合計十九ヶ所を巡拝したことになります。上記札所一覧を見て頂くと、赤色のマーカーで示した三河海岸大師の札所と重複している札所の多さに気が付いていただけるかと思います。そしてもう一つは、浄土宗西山深草派の寺院が非常に多いという事ですね。

三河線廃線区間沿線の札所

 吉良吉田駅から碧南駅の区間は、平成十六年(2004年)に廃線となり、西尾市、碧南市により代替交通機関となる「フレンドバス」が運行されています。廃線区間をトレースするようにバスが運行されているのが特徴で、こちらのバス利用して巡拝していく事になります。運賃は均一料金となっていて200円になります。

吉良吉田駅から碧南駅まではほぼ国道247号線を進んでいく形になります。途中、西三河を代表する河川「矢作古川」、「矢作川」を渡河していきます。(この矢作川を越える渡河橋の老朽化が三河線廃線の原因となっています。)そして、当サイトが神社紹介だけではなく、寺院も紹介を始め最終的にサイト名まで変更に至った遠因となる寺津地区を巡拝しながら碧南駅まで向かっていくルートになります。

バス停 札所 寺院名 住所 宗派
札所霊場一覧
大島 19 宝林山浄泉院 西尾市吉良町大島中44 浄土宗西山深草派
三河海岸大師40番、東条吉良観音20番、善光寺願所17番
松木島 20 大悲山普門寺 西尾市一色町松木島宮東104 浄土宗西山深草派
三河海岸大師41番、西条吉良観音12番、善光寺願所23番
21 真浄院 西尾市一色町千間上通中17 西山浄土宗
 
大宝橋 22 医王山東向寺 西尾市一色町一色南屋敷24 浄土宗西山深草派
三河海岸大師43番
23 大宝山崇用寺 西尾市一色町一色字中屋敷15 浄土宗西山深草派
三河海岸大師45番
24 亀休山善寿院 西尾市一色町一色字上屋敷263 臨済宗妙心寺派
『酒井氏所縁と伝えられる墓石』
一色
高校西
25 和仲山満国寺 西尾市一色町味浜堤西7 浄土宗西山深草派
三河海岸大師50番、三河白寿観音5番、善光寺願所25番
味浜西 26 玉法山西福寺 西尾市一色町赤羽下郷中44 浄土宗西山深草派
三河海岸大師47番
刈宿 27 天沢山常福寺 西尾市刈宿町出口50 浄土宗西山深草派
三河海岸大師55番、西条吉良観音5番、吉良西国13番
巨海 28 海平山瑞用寺 西尾市巨海町宮岸35 浄土宗西山深草派
三河海岸大師57番、西条吉良観音4番、吉良西国11番
寺津
神社前
29 臨済山金剛院 西尾市寺津町南馬場14 臨済宗妙心寺派
三河海岸大師62番、西条吉良観音2番、『寺津城主:大河内氏菩提寺』
30 法海山妙光寺 西尾市寺津町東市場6 浄土宗西山深草派
三河海岸大師60番、吉良西国9番、善光寺願所31番
31 重蔵山養国寺 西尾市寺津町東市場48 浄土宗西山深草派
三河海岸大師61番、西条吉良観音3番、吉良西国8番、善光寺願所30番
寺津
二ツ家
32 龍勢寺 西尾市徳永町西側106 浄土宗西山深草派
三河海岸大師63番、西条吉良観音34番、『徳永城址遺構(土塁)』
別格 亀休山養寿寺 西尾市下矢田町郷2 浄土宗西山深草派
三河海岸大師65番、善光寺願所28番
33 虎洞山桂岩寺 西尾市上矢田町寺前22 浄土宗西山深草派
三河海岸大師66番、西条吉良観音33番、善光寺願所29番
楠村 34 救衆山阿弥陀院 西尾市楠村町堂地27 浄土宗西山深草派
三河海岸大師67番、善光寺願所33番
平坂
港前
35 経師山浄教寺 西尾市平坂町新町24 浄土宗西山深草派
三河海岸大師68番、西条吉良観音32番、善光寺願所32番
平坂
小南
36 徳受院 西尾市田貫町西之川130 浄土宗西山深草派
三河海岸大師69番
これより碧南市に入ります。
毘沙門 37 多聞山妙福寺 碧南市志貴町2-61 浄土宗西山深草派
三河新四国73,74番、三河七福神/毘沙門天
碧南
駅前
別格 東照山称名寺 碧南市築山町2-66 時宗
三河新四国77,78番、『徳川家康幼名"竹千代"命名寺』、『松平氏霊廟』
38 南面山海徳寺 碧南市音羽町1-60 浄土宗西山深草派
三河新四国81,82番、三河十二支/戌亥、大浜大仏(国重要文化財)
39 聖道山常行院 碧南市本郷町3-38 浄土宗鎮西派
三河新四国83,84番
40 華慶山林泉寺 碧南市本郷町3-8 曹洞宗
三河新四国85,86番
41 医王山宝福寺 碧南市中町1 曹洞宗
 

現在の三河線終着駅の碧南駅までやってきました。西尾市の間、ずっと並走の様に進んできた「三河海岸大師霊場」ですが、矢作川を渡河することなく、折り返す様に西尾城下から東条城方面に進んでいくため、平坂あたりでお別れになります。そして、碧南市に入ると、大浜と呼ばれる地区に札所が集中しています。

この辺りは、明治維新の時の神仏分離令を発端として起きた「大浜騒動」で有名な地区になります。この辺りはまた別の機会に・・・。

この区間も非常に浄土宗西山深草派の寺院が非常に多いのが特徴ですね。そして真言宗の寺院が一ヶ所もなかったりします。

名鉄三河線(海側)沿線の札所

 実は、三河線は碧南駅から猿投駅までの直通運行は行われていないんです。名古屋本線の知立駅に三河線を接続させる際、知立駅でスイッチバック型の接続となってしまった為です。その為、碧南駅から猿投駅に行くためには一旦知立駅で乗り換えを行う必要があります。碧南駅を出発する列車の行き先はすべて知立駅になっています。

碧南駅(大浜港駅から改称)ー知立駅間は三河鐡道株式会社の前身である碧海軽便鉄道の時に敷設申請した区間であり、一番最初に開通した三河線の大元となる区間になります。


三河線(海側)路線紹介

碧南ー碧南中央ー新川ー北新川ー高浜港ー三河高浜ー吉浜ー小垣江ー刈谷市ー刈谷ー重原ー知立


・碧南から小垣江間は衣浦港沿いを走っています。明治期から昭和初期までは名古屋港より衣浦港のが大型船の寄港が容易だった為、貨物輸送の需要が多く、知多半島側では武豊線がいち早く建設された経緯があります。そんな中、国鉄の刈谷駅に接続し、三州瓦の生産地である高浜と一大港湾だった大浜港を結ぶ路線への要望が高まり、それを実現したのが三河鐡道になります。

駅名 札所 寺院名 住所 宗派
札所霊場一覧
  42 天王山 法城寺 碧南市天王町3-132 浄土宗鎮西派
三河新四国87,88番
  43 大師協会鶴崎支部 詳細不明 高野山真言宗
廃止?
  44 大師協会新川支部 詳細不明 高野山真言宗
廃止?
  45 静妙庵 高浜市青木町7-6-41 浄土宗
昭和四十四年廃寺
  46 法彩山塩前寺 高浜市青木町8-1-18 曹洞宗
 
  47 寿護山観音寺 高浜市青木町9-7-15 浄土宗鎮西派
 
  48 智教山蓮乗院 高浜市春日町6-8-30 浄土宗鎮西派
 
  49 白蓮寺 高浜市八幡町4-5-28 浄土宗
 
  50 法栄寺 刈谷市小垣江町須賀102 浄土宗鎮西派
 
  51 法輪山専称寺 刈谷市小垣江町地内161 浄土宗鎮西派
 
  52 龍雲山海会寺 刈谷市元町1-2 曹洞宗
 
  53 具足山十念寺 刈谷市広小路4-219 浄土宗西山禅林寺派
 
  54 円通山松秀寺 刈谷市銀座2-100 曹洞宗
 
  55 常慶寺 刈谷市相生町3-21-1 高野山真言宗
 
  56 田中山大沢寺 知立市上重原町家下 真言宗豊山派
廃寺、現地に札所案内石柱など遺構が残っています。
  57 弘法山遍照院 知立市弘法町弘法山19 真言宗豊山派
三河新四国開創霊場、三河國准四国57番、三河三弘法1番、東海不動尊18番
  中札所 大師教会 知立市弘法町丁凪66 真言宗国分寺派
 
  58 神路山総持寺 知立市西町新川48 天台宗
三河新四国1番、三河三不動1番、三河白寿観音7番

今までの区間と比べて、他の霊場と札所を兼任している寺院の数が一気に減りました。というか、蒲郡から西尾市までの間の「三河海岸大師霊場」とのまるで並走しているような札所の関係がおかしいのかもしれません。ただ、霊場巡りを始めた切っ掛けが三河海岸大師霊場だったりするので、ほかの霊場と交わらない寺院はなんとなく寂しい気分になってしまいますね。そして、ついに、廃寺になってしまった寺院に出会いました。大師教会については区画整理事業もありどこにあったのかも分からない状況なのですが、他二ヶ寺については、跡地に遺構が残されているので雰囲気は解っていただけるかなと思います。

そうそう、58番札所の神路山総持寺なんですが、元々は三河国二ノ宮「知立神社」の別当寺であり、明治維新の際行われた神仏分離令により一旦は廃寺となった寺院です。昭和二年に境内地を現在地に移転し再興します。総持寺を参拝の際には、合わせて知立神社にも立ち寄り参拝してほしいですね。

宗派については、蒲郡ー碧南区間では一大勢力となっていた浄土宗西山深草派の寺院がまったく見かけなくなりました。こういった宗派にも地域的特性があるようですね。

 「知立の弘法さん」として有名な遍照院が57番札所に登場しています。この遍照院は再興された三河新四国霊場の開創霊場となっていて、納経帳にも一番札所の前に開創霊場として記載されています。そして、結願後はお礼参りで再び遍照院を参拝して納経帳に書かれている弘法大師像の場所に納経をして頂くそうです。

名鉄三河線(山側)沿線の札所

 三河線の碧南駅、猿投駅行の始発駅となる知立駅。前述しましたが三河線は知立駅でスイッチバック接続を行っている為、同一路線なのですが、事実上二路線に分けて運行されています。現在(2019.5月現在)、知立駅は高架工事の真っ最中になります。今まで平面接続だった名古屋本線と三河線が立体接続に変更されていく訳です。(イメージ的には常滑線と河和線が立体接続されている太田川駅かな。)そんな大改造中の知立駅周辺から三河線(山側)に載り、終着駅猿投駅まで向かっていきたいと思います。

三河線(山側)
知立駅と挙母間の線敷設免許を下付された「知挙軽便鉄道」が三河線(山側)のルーツとなります。その後、同時期に大浜港駅ー知立駅間の敷設免許を下付された「碧海軽便鉄道」と合併し「三河鐡道株式会社」となります。
大浜港駅ー知立駅間の開設から遅れる事6年後の大正9年に知立駅ー挙母駅間が全線開通します。
その間、経営不振により経営陣の総入れ替えが行われ、新経営陣の一人神谷氏の私財投入と経営立て直しにより路線の延長が決定され、挙母駅から足助駅迄の路線延長が決定されます。(最終的には西中金駅までの延伸となり、足助延長は幻に。)
しかし、平成十六年、猿投駅から西中金駅間が廃線となり、現在の三河線の終点駅は猿投駅になっています。

駅名 札所 寺院名 住所 宗派
札所霊場一覧
  59 福聚山慈眼寺 知立市山町桜馬場4 曹洞宗
知立三弘法3番、三河西国観音28番
  60 八橋山無量寿寺 知立市八橋町寺内61-1 臨済宗妙心寺派
三河新四国4番
  61 弘法堂 豊田市若林東町沖田 真言宗豊山派
廃止?
  62 鈴木山龍興寺 豊田市中町中郷98 臨済宗妙心寺派
三河新四国5,6番
  63 弘法堂 豊田市土橋町2丁目地内 真言宗
廃止(2011年撮影のストリートビューには当時の様子が写っています。)
  64 大林山萬福寺 豊田市大林町3-183 浄土宗
 
  65 金谷山三光寺 豊田市金谷町5-63 真言宗醍醐派
三河新四国7,8番
  別格 集雲山長興寺 豊田市長興寺1-29 臨済宗妙心寺派
三河西国観音31番
  66 歓喜山水音寺 豊田市上挙母1-46 真言宗醍醐派
三河西国観音32番
  67 得雲山神龍寺 豊田市朝日ヶ丘6-41 曹洞宗
 
  68 萬燈山弘法院 豊田市小坂本町2-23-4 真言宗醍醐派
 
  69 茶光山安栖院 豊田市桜町1-67 浄土宗
 
  70 輝雲山瑞光院 豊田市挙母町5-12 浄土宗
 
  71 本然山浄久寺 豊田市喜多町3-1 浄土宗
 
  72 梅坪山霊岩寺 豊田市平芝町6-3 曹洞宗
 
  73 身掛山観音院 豊田市越戸町松葉41 真言宗醍醐派
三河新四国13,14番
  74 護念山阿弥陀院 豊田市平戸橋町太戸125 浄土宗
 
  75 三河別院 豊田市四郷町 真言宗金剛院
廃寺
  76 水月山雲龍寺 豊田市四郷町山畑78 曹洞宗
三河新四国19,20番
  77 妙学院 豊田市亀首町下町屋14 真言宗醍醐派
廃寺(2011年撮影のストリートビューでは在りし日の妙学院が見られます。)
  奥の院 猿投山東昌院 豊田市猿投町大城4 浄土宗鎮西派
三河新四国17,18番、三河西国観音33番、『猿投神社別当寺白鳳寺』

 三河線周辺と猿投駅までやってきました。奥の院である猿投山大悲殿東昌寺へは、猿投駅から約7kmほど離れていて徒歩で片道1時間30分から2時間を要するまさに(旧)三河新四国霊場奥の院といった感じです。

 東昌寺の源流は三河三の宮である猿投神社の別当寺白鳳寺になります。明治維新の際、神仏分離令により廃寺となってしまいましたが、後年宗派を浄土宗に改宗し再興しています。厳密にいえば繋がりが無いのかもしれませんが、ぜひとも猿投神社にも参拝してほしいです。

 巡礼が進むにつれ、様々な宗派の寺院の協力によって三河新四国霊場が開創されたのが解ってきました。特に浄土宗の各宗派の協力はかなり篤いものがありますね。半数以上の札所は浄土宗の寺院ですからね・・・。

三河線廃線区間+未開通区間沿線の札所

 前述しましたが、猿投駅ー西中金駅間は平成16年に廃止されてしまっています。廃線に伴う代替バス運行は、元々運行されていた「西中金駅ー足助間」のバス路線を延長する形で行われることになり、その際要望のあった、愛知環状鉄道四郷駅まで延伸する形で四郷駅ー足助間を走る「さなげ足助バス」が開設されます。(その後市町村合併により足助町も豊田市に併合されたため、現在では「とよたおいでんバス さなげ足助線」と名称変更しています。)

 猿投駅を出発すると三河線の廃線跡をトレースするように矢作川右岸を進み、広瀬地区で矢作川と渡河。その後は国道153号線を進んでいき足助の市街地に向かう路線になります。ちなみに猿投駅ー足助間の運賃は500円です。

駅名 札所 寺院名 住所 宗派
札所霊場一覧
  78 正報山浄厳寺 豊田市御船町寺脇10-14 浄土宗
西加茂郡新四国58番
  79 医王山薬王寺 豊田市枝下町平岩75 曹洞宗
 
  80 観音山金泉寺 豊田市東広瀬町神田12 曹洞宗
 
  別格 光龍山宝積寺 豊田市西広瀬町大久保408 曹洞宗
西加茂郡新四国55番
  81 極楽山広済寺 豊田市東広瀬町大根坂21 曹洞宗
 
  82 金重山広昌院 豊田市力石町井ノ上117 浄土宗
三河新四国15,16番
  83 薬師堂 豊田市中金町清水口552 不明
廃寺
  84 大師教会追分支部 豊田市近岡町 真言宗
廃寺
  85 御所山普光寺 豊田市足助町天王5-1 曹洞宗
 
  86 宝中山慶安寺  豊田市足助町陣屋跡17 曹洞宗
 
  87 光明山宝珠院 豊田市足助町東井ノ上16 浄土宗西山深草派
 
  88 飯盛山香積寺 豊田市足助町飯盛39 曹洞宗
『香嵐渓』

おいでんバスにのって「香嵐渓」バス停で下車すると豊田市足助支所のすぐ前になります。実は87番札所の宝樹院のが香嵐渓より奥まった場所にある為、「中之御所」バス停まで進み、宝樹院を巡拝した後、徒歩にて香嵐渓方面に戻るのがよろしいかと思います。

まとめ

一番札所の「薬証寺」から八十八番札所の「香積寺」を結ぶ(旧)三河新四国霊場なんですが、札所の位置を見ていると、結果的に海沿いの観光地である「蒲郡」と、山間の紅葉で有名な「香嵐渓」を結ぶ形になっていますね。

実は、昭和二年に三河新四国霊場が開創される前には、それぞれの群内に新四国霊場が存在していた様なんです。
蒲郡から西尾市の札所に着いては、何度も書いていますが「三河海岸大師霊場」がありました。碧南市ー豊田市南部にかけてはその昔は碧海郡と言われ、札所もよくわかっていないというほぼ未知の霊場である「碧海新四国霊場」があったようなんです。そして豊田市から足助町にかけては西加茂郡と呼ばれており、まあ当然の様に「三河国西加茂郡新四国霊場」があります。
そして、寛永二年(1626年)に西加茂郷の浦野上人が開創したと伝えられている「三河新四国霊場」。この三河新四国霊場がどのあたりを霊場していたのかという情報もないのですが、少なくとも昭和二年の再興された際に大幅に札所が刷新されているはずですですからねえ・・・。

昭和2年に開創され、昭和39年に大幅な札所刷新に再興されるまでの僅か37年間のみの活動となった(旧)三河新四国霊場ですが、現在でも三河線沿線の一部が廃線により代替輸送バスとなってしまってはいますが、それでもまだ蒲郡駅から足助まで乗り換えをしながら移動することが可能になっています。そんな「三河鐡道」が夢見た(旧)三河新四国霊場を是非遍路してみてはいかがですか?

2019年5月31日