安城市別郷町の鎮守社である「市杵嶋姫社/紹介記事」を参拝した時、境内の一角に「別郷廃寺跡」の案内看板が設置されているのに気が付きました。岡崎市北野にある「北野廃寺跡」に通じる飛鳥時代から奈良時代に建立された寺院という事で、古くからこの辺りには仏教文化が伝播していた事を示す遺跡ですね。
寺院情報
寺院名 | 別郷廃寺 |
所在地 | 愛知県安城市別郷町油石五十三番地 |
御本尊 | ー |
宗 派 | ー |
創 建 | 飛鳥時代後期か? |
札 所 | ー |
御朱印 | ー |
H P | ー |
参拝日:2020年7月12日
沿革・由緒
安城市の説明によると昭和二十八年(1953年)に「市杵嶋姫社/紹介記事」の境内周辺から古代の瓦が散布されている事が確認されたといいいます。ただこの昭和二十八年に古代の瓦であると確認されたというだけで、それ以前から別郷のこの地に住む人たちにとっては、農耕作業をしているとあちこちから瓦が出てくるなぁ。といった認識だったのではないでしょうか。
この時に確認された瓦は七世紀後半に建立されたという西三河最古の寺院である「北野廃寺」から出土された「素弁六弁蓮華文軒丸瓦」と同じ物が出土した事から、建立時期は北野廃寺とあまり変わらないのではないか?と考えられています。
そうなると、北野廃寺を建立している時、そこで作られた瓦などの資材を現在の地図を参照すると、鹿乗川を利用して別郷に運ばれていたのではないかと想像されます。(飛鳥時代から奈良時代にかけて矢作川がどう流れていたのか不明な為、当時鹿乗川があったのかもわかりませんが・・・。)
また、市杵嶋姫社の境内には別郷廃寺の礎石ではないかとされる石があるといいます。(瑞垣で囲まれている本殿の脇に置かれているとか。)ただ、この礎石は当然動かされて今の場所に据えられているはずで、どこにこの礎石が埋まっていたのか分からない為、伽藍の位置が分からず、その規模なども不明とされていました。
しかし、平成二十五年(2013年)、別郷町の北にある西別所町において個人の住宅建築工事にあわせて発掘調査が行われ、今まで不明とされてきた伽藍の規模などが見えてきました。
発掘調査において廃棄土坑が見つかり、そこから大量の古代瓦や火舎・多口瓶・大甕の破片などが出土しています。さらにその中に特に大きな破片があり、この破片が「鴟尾」と確認され、金堂が建てられていた事がわかったと言います。
この「鴟尾」の発見はかなりの大ニュースだったようですね。愛知県で「鴟尾」が発見されるのは七例目なんだそうで、発見された破片の大きさは「残存幅52cm、残存高20cm、厚み9~6cm」もあり、破片の大きさとしては愛知県最大といいます。この破片を元に鴟尾を復元させると高さ120cmになると見られています。
https://www.city.anjo.aichi.jp/shisei/shisetsu/kyoikushisetsu/maibun-bunkazainews-sibi.html
安城市のホームページでわざわざ専用ページを作って報告している所からも、大発見だという事がわかりますね。写真を見ていると大きさがわかりにくいのですが、横幅50cmもあるわけですから、想像する以上に大きいんだろうと思います。
歴史探訪
矢作川右岸に飛鳥時代から奈良時代にかけて建立されたという仏教寺院跡が存在しています。西三河最古の寺院とも言われる「北野廃寺」、そしてほぼ同時期に建立され今回紹介する「別郷廃寺」、出土した瓦などから北野廃寺との関連性があるとされている「寺領廃寺/紹介記事」、さらに、現在では江戸時代に掘削されてその主流の流れが変わってしまった矢作川が隔ててしまっていますが、それ以前はやはり矢作川右岸にあった「志貴野廃寺」と四ヶ寺確認されています。
矢作川右岸にのみ建立されていた様で、左岸側でこういった寺院跡は聞きません。これには何らかの要因があるのでしょうか・・・。
参拝記
前回紹介した「市杵嶋姫社/紹介記事」の境内の片隅に別郷廃寺の説明板が設置されています。しかし、別郷廃寺の遺構はまったく無いので、この説明板が無ければ、どこが廃寺跡?となってしまいます。
説明板を読んでいると、平成二十五年発掘調査で見つかった「鴟尾」について全く触れられていない事から、それ以前に設置された説明板なんだろうと思います。安城市ではこういった文化財の現地説明板を順次新しくしている様ですので、近い将来発掘された「鴟尾」についての記述も含めた新しい説明板が設置されると思います。そうなると、別郷廃寺の全体像も見やすくなるのかもしれませんね。
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所在地を地図で確認
寺院名 | 別郷廃寺 |
所在地 | 愛知県安城市別郷町油石五十三番地 |
最寄駅 | 名鉄バス岡崎安城線「別郷バス停」徒歩4分 |
寺院・霊場巡りの際のバイブルに
元々、当サイトは神社巡りを通じて、皆様の住んでいる所にある"村の鎮守の神様"と呼ばれる神社を紹介してくサイトを目指していたんです。むしろ寺院については、縁遠いものとおもっていたんですよね。しかし、ちょっとした御縁で弘法大師霊場に出会い、そして愛知県では一番活動が盛んな"知多四国霊場"を巡礼、結願する事になりました。でも、神社の事はある程度知識があっても、寺院については未知の世界だったので、少しでも巡礼の時に役に立てばと思い、こちらの本を読ませて頂いております。
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